術
君は術を持っている。
僕もその術を使えたらいいのに、と思う。
そう思って僕は君に聞いたのだ。
「どうか僕に君の術を授けてくれないだろうか。」
そう告げる僕を君は憐みの目で見たのだ。
「ああ友よ。僕とて君に、あの素晴らしき術を教えてあげたい。そしてこのえも言われぬ幸せを君と分かち合いたい」
そういうと君は人差し指で天を指したのだ。
「ああ友よ。しかしこの天とは、かようにも不公平なものなのだよ。」
君は自分の胸を指さし「僕には術がある。それは生まれながらに備わったものだ。生まれながらに天から与えられたものなのだ」そして僕の胸を指さし「君には術がない。生まれたとき、君にはそれが与えられなかったからだ。」
「天は与えるものには与えたもう。」
そう甲高い声で君は叫び走って去っていった。
「ちぇっ!ちぇっ!」
ひとり取り残された僕は舌打ちをした。
あまりに不公平な天に腹が立って、天に唾してやった。
ぺえええええええええええ!!!!!!
ものすごい量のつばきが天に舞い上がった。
「僕のつばと、肺活量と、唇の瞬発力を見よ!」
つばきはみるみる空へと舞いあがり、見えなくなった。
はははははははははははは!!!!
僕は世界中に響き渡るような高笑いをした。
術がなんだ。天がなんだというのだ。
僕のつばきは天に舞い上がり、今頃天の住人の顔にぶちまけられたところだろう。
そう思い浮かべたところで、術を持たない現実を束の間忘れ、僕は家路につこうとした。
すると曇天にわかにかきくもり、ごおおおおおおと地が震えるかのような音を聞いたかと思ううち、レーザービームのように一点集中型の雨が、恐ろしい圧力をもって僕の足元直径10センチで地面を打ち付けたかと思うと、水の圧力で地は割れ、たちまち地面は切り裂け、あわれ僕は地の底に沈んだのであった。
天に唾するものは必ずその報いを受ける。
悲しい話だと思いませんか?

